おおいけ法律事務所 弁護士 﨑山 有紀子

 
 

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少年事件




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 少年事件で出される処分にはさまざまなものがありますが、それぞれの違いがよく分からないのですが…


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 1つ前のQ&Aで少年事件、少年審判の流れを概観しました。今回は、家庭裁判所によって出されるそれぞれの「処分」についてご説明します。

 検察などから少年事件の送致を受けた家裁は、その事件が軽微で、調査を通じた教育的な働きかけをすれば再非行の恐れがないと判断した場合には、調査を行っただけで少年審判を開かずに事件を終わらせます。これが「審判不開始」です。また少年審判を開く決定をした場合でも、その少年が非行を行なったとは認められない場合や、調査や審判を通じたさまざまな教育的な働きかけによってその少年に再非行の恐れがないと判断した場合には、少年を処分しない「不処分」決定が出されます。

 審判不開始や不処分という言葉を聞くと、家庭裁判所が何もしないまま少年事件を処理していると思う方があるかもしれませんが、そうではありません。不処分や審判不開始で終わる場合でも、裁判官や家庭裁判所調査官は訓戒(くんかい)や指導といった教育的な働きかけを行なっています。家裁の裁判官は、少年や保護者がそれをどのように受け止めたかを見極めた上で決定を出すのです。

 例えば、無免許運転などの場合は、少年を保護者とともに家庭裁判所が実施する講習に参加させ、無免許運転の危険性や社会的責任、あるいは運転には人命尊重と遵法の精神が必要であることを理解させようとする取り組みが行われています。講習の際には少年と保護者に対し、講師から無免許運転が法律で禁止されている理由やその危険性について説明をするほか、無免許運転を題材としたビデオを見せてその内容について話し合うといったことも行われています。裁判官はその結果を踏まえ、保護処分をする必要まではないと判断した場合に初めて「不処分」の決定を出すのです。


 調査や審判の結果、少年を児童福祉機関の指導にゆだねるのがよい、と認められた場合には、知事又は児童相談所長に事件を送致します(「知事又は児童相談所長送致決定」)。これは少年が18歳未満の場合に限ります。児童相談所は、児童福祉司による指導、児童福祉施設への入所や里親への委託などの措置を行う都道府県の機関です。


 このほか、「保護処分決定」として分類される処分があります。①保護観察、②児童自立支援施設又は児童養護施設送致、③少年院送致--です。

 ①保護観察は、保護観察官や保護司(法務大臣から委嘱を受けた非常勤の民間人です)の指導・監督を受けながら社会内で更生できると判断された場合に出される処分です。施設に入所する必要はありません。決められた約束ごとを守りながら家庭などで生活し、保護観察官や保護司から生活や交友関係などについて指導を受けることになります。

 ②児童自立支援施設又は児童養護施設送致は、比較的低年齢の少年について、開放的な施設での生活指導が望ましいと判断された場合の処分です。児童自立支援施設、児童養護施設は福祉施設です。主に不良行為をしたり、又は不良行為をする恐れのある少年などを入所させて必要な指導を行い、その自立を支援することを目的としています。

 ③少年院送致は、再非行を犯すおそれが強く、社会内での更生が難しい場合に出される処分です。少年は少年院に収容され、矯正(きょうせい)教育を受けることになります。少年院では再び非行を犯すことのないよう少年に反省を深めさせるとともに、謝罪の気持ちを持つように促し、併せて規則正しい生活習慣を身に付けさせ、教科教育、職業指導をするなど全般的な指導が行われます。


 少年の非行歴、心身の成熟度、性格、事件の内容などから、以上のような「保護処分」ではなく、刑事裁判によって処罰する「刑事処分」を受けさせる必要があると判断された場合には、事件は検察官に送致(逆送)されます。「検察官送致決定」です。少年が故意に被害者を死亡させ、その罪を犯したときに16歳以上であった場合には、原則としてこの検察官送致処分をしなければならないとされています(いわゆる原則検送制度)。検察官送致がされた場合、検察官は原則として、少年を地方裁判所又は簡易裁判所に起訴しなければなりません。



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