おおいけ法律事務所 弁護士 﨑山 有紀子

 
 

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なるほどQ&A 市民生活でよく遭遇する法的なトラブル・問題の解決法は

交通事故




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 車の運転免許を取りました。これからハンドルを握る者として、万が一交通事故を起こしてしまったときに「しなければならないこと」を確認しておきたいと思います。どのようなことがありますか


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 素晴らしい心掛けですね。感心しました。ドライバーが皆、あなたのような気持ちでハンドルを握れば、交通事故も随分減るのではないでしょうか。

 ご存じの方も多いかもしれませんが、車の運転など道路交通の基本ルールを定めた法律は、道路交通法(略称は道交法)という法律です。この道交法で、事故を起こした車の運転者や同乗者には、次の義務が課されています。運転者だけではなく同乗者にも、法律上の義務が課されている点は注意が必要です。


 ①直ちに運転を停止し、事故の内容や程度、被害の有無を確かめ、必要な措置をとる義務
 ②負傷者があれば、直ちにこれを救護する義務
 ③事故のため散乱した物を撤去して後続車が二次的な事故に遭わないようにするなど、道路における危険を防止する義務
 ④警察官に事故について報告する義務



 それぞれの義務について、補足します。①や②の義務を怠ると「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」が課されます。人が死んだりけがをしたりした事故でこの義務違反を犯すと、罰則は5倍の「5年以下の懲役または50万円以下の罰金」に、人の死傷が運転者に原因がある事故の場合にこの義務違反をすると、さらに重い「10年以下の懲役または100万円以下の罰金」となっています。

 ②は「救護義務」と呼ばれます。この救護義務違反がいわゆる「ひき逃げ」です。ひき逃げはこのように道交法上の義務違反として規定されていますが、悪質な場合には刑罰がより重い、刑法上の「保護責任者遺棄罪」を問われる場合もあります。さらには、例えば〈病院に連れていけば命は助かったのに、大けがを負った相手を救出せず放置し、みすみす見殺しにした〉というようなケースなどでは、殺人罪も成立し得ます。

 ④の警察官への報告は、以下の事柄を伝えなければなりません。

 ア)事故が発生した日時と場所
 イ)事故による死傷者の数とその負傷の程度
 ウ)事故で壊れた物とその壊れた程度
 エ)事故車両が積んでいた物
 オ)事故について講じた措置



 以上は、交通事故の当事者(加害者、被害者、その同乗者)が事故発生時にとるべき行動として、法律上の義務とされている事柄です。しかし、こうした義務以外にも、交通事故の際に「しなければならないこと」はまだあります。

 ひとつは、自動車保険(強制保険、任意保険)の契約をしている保険会社に、直ちに事故の発生日時、場所、概要(相手方や被害の程度など)について連絡することです。交通事故では加害者、被害者双方の保険会社の担当者が示談など以後の交渉を進めていくケースが一般的ですが、それも事故を起こしたらすぐ保険会社に連絡をしてこそ、です。正当な理由なくこの「事故後の速やかな連絡」を怠った場合、保険金の支払いは拒絶されますので注意が必要です。

 もうひとつは、後々争いや問題が生じた場合に備えて、事故に関する事柄をきちんと書き留めておき、証拠になりそうな物はきちんと保管しておくということです。事故直後は覚えている事柄も、時間がたてば忘れたりあやふやになったりします。事故原因について自分はどう思ったか、事故直後に相手方はどう言っていたか、自分は警察官にどう説明し、警察官からは何を聞かれたか、保険会社の担当者とはどのようなやり取りをしたのか、などなど、事故に関することは何でも、時系列でノートに書いていくのがいいと思います。きちんと整理する必要はありません。思い出せることをすべて、とにかく書き留めておく、というスタンスで構わないと思います。大したことなく思えることでも、細かく記録しておくことが、後の交渉や裁判の場での筋の通った主張や具体的な証言につながります。



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