おおいけ法律事務所 弁護士 﨑山 有紀子

 
 

〒815-0073 福岡市南区大池1-23-8-305

電話092-555-7507

なるほどQ&A 市民生活でよく遭遇する法的なトラブル・問題の解決法は

交通事故




  Qアイコン

 車を運転していて、信号機のない交差点で自転車と衝突する事故を起こしてしまいました。見通しがあまりよくなく、私も確認が不十分だったかもしれませんが、自転車もブレーキをかけずに飛び出してきたので、相手の方にも事故について責任があると思います。私の損害賠償責任はどのようになりますか


  Aアイコン

 損害賠償の金額を決めるに当たって被害者側にも落ち度(法律では「過失」と言います)がある場合、加害者が支払うべき賠償額は被害者側の過失の割合だけ割り引かれ、少なくなります。「過失相殺(そうさい)」と呼ばれるものですが、これは交通事故においても適用されます。

 ただし、交通人身事故の損害をまず補てんする自賠責保険(強制保険)では、この過失相殺が認められる要件が一般の損害賠償に比べて厳しくなっています。つまり、被害者に「重大な過失」があった場合のみ、2割から5割の減額がされることになっています。被害者の保護を優先し、賠償額の支払いを確保する政策的な理由だと思われます。

 被害者側の過失を考慮して加害者側が支払う賠償額を減額するためには、被害者側に「事理を弁識する能力」が備わっていることが必要です。そもそも「責任を問えるような被害者」でなければ、あなたにも落ち度があった、と責めることはできないからです。裁判例ではこの能力は「5歳ぐらいの幼児程度の知能」とされています。したがって、仮に3歳ぐらいの子どもがいきなり道路に飛び出してきたのではねてしまった、という場合は、「いきなり飛び出してきた」という過失があっても、直接それを相殺することは難しいと考えられます。ただし、このような事理弁識能力のない幼児が被害者の場合でも、一緒にいた親などの「監督者」に過失があれば、その過失と相殺することは可能です。例えば、一緒にいた親が知り合いとの立ち話に夢中で子どもから目を離していた、といったケースならば、一般的に過失相殺は認められるでしょう。

 過失相殺が認められる場合でも、加害者と被害者の過失割合をどう認定するかは、事故の状況によってケースバイケースです。ご質問のケースは、信号機のない交差点で自動車と自転車がそれぞれ直進して衝突した、という場合でした。仮にそれぞれの道幅が同じぐらい(どちらかが優先通行になる、といった関係が特にない)とするならば、裁判の実務で用いられる基準ではおおよそ「自動車80%、自転車20%」が基本的な過失割合になっています。これに、例えば自動車側が一時停止や原則をしたか(→Yesならば、自動車側の過失割合は小さくなる)、自転車に乗っていたのが老人や子どもだったか(→Yesならば、車の運転者としてはより一層注意して通行しなければならなかったわけで、自動車側の過失割合は大きくなる)など、それぞれ個別の事案ごとの事情を加味して、最終的な過失割合が決まることになります。



交通事故QA1 交通事故QA2 交通事故QA3 交通事故QA4 交通事故QA5 交通事故QA6 交通事故QA7