おおいけ法律事務所 弁護士 﨑山 有紀子

 
 

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なるほどQ&A 市民生活でよく遭遇する法的なトラブル・問題の解決法は

交通事故




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 交通事故で車にはねられ、腰に大けがを負いました。退院後もしびれや痛みがあるため、結局、建設現場の作業員としての仕事をやめざるを得なくなりました。交通事故の加害者には、この仕事を失ったことに対する損害賠償も請求できるのでしょうか


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 交通事故によってけがを負い、治療をしてもそれ以上は症状の改善が望めなくなった状態のことを「症状固定」と呼びます。この症状固定の状態で身体に残った障害が「後遺症」ですが、人身交通事故を補てんする自賠責保険(強制保険)では、この障害のことを「後遺障害」と呼んでいます。

 後遺障害を負った事故被害者の方は、単に身体に不具合が残ったということにとどまらず、例えばご質問のケースのように仕事が続けられなくなったり、日常生活に支障が出る不利益を被ったりするわけです。こうした損害は、もちろん加害者に対して賠償請求できます。法律用語で言えば、後遺障害による損害賠償は「逸失利益」と「慰謝料」として請求できます。


 逸失利益とは、「被害者が事故に遭わなかったならば、働いて稼げたはずの収入」を指します。ここで言う収入は、原則として事故前にその被害者が実際に得ていた額を基に計算します。事故に遭った結果、被害者はそれまで収入を得るために使っていた労働能力を、ある割合で失ったことになります。自動車事故の損害賠償を扱う法律では、後遺障害を第1級から第14級までの等級に分け、この等級ごとに例えば第1級は100%、第14級は5%というように、この労働能力の喪失率を定めています。つまり、症状固定時の後遺障害の等級が決まれば、労働能力喪失率も決まることになります。あとはどれくらいの間、その収入を得られたはずだったという「期間」が決まれば、被害者の逸失利益は計算できることになります。この点について裁判の実務では、人は「18歳から67歳までの間、働いて収入を得る」と考えることにしています。

 従って、計算式で表現すれば、交通事故被害者の逸失利益は次のようになります。


 [事故前の現実年収額]×[労働能力の喪失率(←後遺障害の等級で決定)]×[67-事故時の年齢(※18歳以下の場合は「18」)]年


 なお、被害者が専業主婦の場合も、家事労働に関する労働能力の一定割合を事故によって喪失したと考えられます。従って、例えば炊事ができなくなって毎回配食サービスを利用せざるを得なくなった、といった場合、その損害はこの「逸失利益」として請求できます。


 逸失利益のほか、将来にわたって身体に障害が残ることによる精神的被害を「慰謝料」として請求することもできます。この慰謝料の金額についても、後遺障害の等級ごとに基本的には決まっていますが、個別の事情を考慮して、ある程度増減されることもあります。



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