犯罪被害者
犯罪被害者・遺族の支援策の一環として、損害賠償の請求に刑事裁判の成果を利用することで、被害者側としては手間・労力が軽減される制度があると聞いたのですが
ご質問の制度は「損害賠償命令制度」と呼ばれるものです。被害者・遺族の方は、相手方の犯罪行為の処罰を求める刑事裁判とは別に、その損害を金銭で償ってもらうべく損害賠償の請求を民事裁判で行うことが通常です。しかし、損害の原因となった事実=犯罪行為については、基本的に既に刑事裁判の中で裁判所が審理をしているわけです。もしその成果(認定の結果)を民事手続きとしても利用できるなら、被害者側としてはあらためて裁判を起こす手間が省け、負担が軽くなります。このように損害賠償命令制度は、手続きを簡易迅速に進めるということを通じて、事実上、被害者・遺族の支援策の一つとして機能しています。
損害賠償命令は、刑事裁判を審理している裁判所に対して申し立てます。この申し立ては、起訴されてから審理が終わる(「結審」と言います)までの間にする必要があります。申し立てを受けた裁判所は刑事裁判で有罪判決を出した後、刑事裁判の訴訟記録をあらためて損害賠償額を決めるための証拠として取り調べます。原則4回以内の審理期日で、賠償額についての決定が出されます。この決定には、被害者側が民事裁判を起こした場合に出される確定判決と同じ効力があります。なお、この決定に対して当事者のいずれかから異議の申立てがあれば、通常の民事裁判の手続きに移ります。その場合でも、審理に必要な刑事裁判の記録は、民事の裁判所に送付されます。
損害賠償命令制度の特徴をおさらいしましょう。刑事裁判の成果が利用されることで、被害者・遺族側にとっては被害の事実の立証はしやすくなります。審理は基本的に賠償額の算定が中心になりますので、手続きは簡易迅速に進みます。申立手数料も2,000円と、利用しやすい設定になっています。
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