おおいけ法律事務所 弁護士 﨑山 有紀子

 
 

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なるほどQ&A 市民生活でよく遭遇する法的なトラブル・問題の解決法は

消費者




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 インターネットショッピングをしていました。うっかり変なボタンをクリックしてしまったらしく、自分としては意図していない商品を注文してしまいました。商品が送られてきてはじめて、自分がパソコンを操作ミスしたことに気づきました。この要らない商品は返品できないのでしょうか


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 インターネット上の取引におけるトラブルは、最近ご相談が増えています。ご質問のような問題は、結論から先に申し上げると、①申し込み内容を確認できる画面が表示されないウェブサイトの場合には、契約申し込みの意思表示を無効として商品を返品できますが、②申し込み内容を確認できる画面が現れるウェブサイトの場合には、契約申し込みの意思表示は無効とならず、商品の返品はできない--ことになります。以下、順番にご説明しましょう。


 パソコンの操作を誤った場合のように、申し込みや承諾をした際の「客観的な表示」と「その人の意図した真意」との間に食い違いが生じている状態を「錯誤(さくご)」と呼びます。民法では、ⓐこの食い違いが意思表示の重要な部分に関するものである場合には、その意思表示は無効、ⓑただし、意思表示をした人に重大な過失(不注意)がある場合には、無効を主張することはできない--という決まりになっています。

 インターネットの普及に伴って急増したネット上の取引では、「商品を間違えた」「数量を間違えた」などのトラブルも頻発しました。そこで民法とは別に特別の法律を作って、トラブルの予防や消費者の保護が図られました。「電子消費者契約法」(電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律)というものです。その中では、ⓒ消費者がパソコンで申し込みまたは承諾の意思表示をする際に、事業者の方で、消費者が画面を通じて自分の意思表示の内容を確認できる措置をとっていない場合には、たとえ消費者に重大な過失(不注意)があったとしても、契約(の意思表示)の無効を主張することができる--と定められています。


 ここまでの話をおさらいしてみましょう。まず前提として、

  [原則]       ⓐ契約内容を錯誤した場合、その意思表示は無効(←←民法)
  [例外]       ⓑ意思表示をした人に重大な過失(不注意)があれば、無効の主張は不可(←←民法)
  [例外のさらに例外] ⓒ重大な過失(不注意)があっても無効の主張可(←←電子消費者契約法)

--という関係にあります。①申し込み内容を確認できる画面が表示されないサイトでの取引の場合には、電子消費者契約法によるⓒ(=意思表示無効→商品返品可)が適用されます。他方、②申し込み内容を確認できる画面が表示されるサイトでの取引の場合には、民法によるⓑ(意思表示の無効の主張不可→商品返品も不可)が適用されます。確認画面が表示されたにもかかわらず購入ボタンをクリックしてしまったとすれば、それは「勘違いだった」と主張してみたところで、「意思表示をした人に重大な過失(不注意)」があってパソコンの操作ミスをした--ということになるからです。



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