おおいけ法律事務所 弁護士 﨑山 有紀子

 
 

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 マンションの建替えに反対している住人です。最後まで私が反対のまま建替えが決まった場合、このマンションに対する私の権利はどうなりますか


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 マンションの建替えは、例えば老朽化や地震の被災の程度が激しいなどの場合に、「修繕」ではもはや対応できないとして決まる、というケースが典型的だと思われます。マンションの理事会あるいは建替え検討委員会といった特別に起ち上げられた組織が中心になり、住民間で話し合いをしながら計画が進められていきます。もちろん大変重大な事項ですので、区分所有法の中に、特別に規定が置かれています。

 まず建て替えをするには、建替え決議を目的として集会を開き、区分所有者及び議決権のそれぞれ5分の4以上の多数による決議(「特別多数決議」)がされなければなりません。この集会が開かれるという通知は、2カ月前までに発送しなければならない決まりになっています。集会開催の通知の中では、集会での決議事項に当たる①新しく建てる建物の設計の概要、②取り壊しと建築に必要な費用の概算額、③費用の分担の方法、④新しく建てる建物の区分所有権の帰属方法--をあらかじめ示しておかねばならないほか、⑤建替えを必要とする理由や、⑥建替えないとした場合にマンションとしての効用を維持・回復するのにかかる費用--なども記しておかねばならない決まりになっています。さらに、通知するだけでは不十分で、通知した内容を説明するための会合も、集会の1カ月前までに開かねばなりません。重大事項にふさわしく、情報提供の点で徹底して慎重かつ丁寧な手続きが定められていることが、よくお分かりになると思います。

 マンションの建替えについては、区分所有法以外に「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」という、この問題を専門に扱うために作られた法律もその手続きを定めています。 マンション建替え円滑化法の中では、建替え事業の主体として「マンション建替え組合」を設立することが認められています。また、建替え前のマンションの区分所有権を消滅させずに建替え後のマンションに区分所有権を移行させる仕組みである「権利変換」が定められています。


 今回のご質問の方は、建替えに反対されている住人とのことでした。以下、建替えに反対の住人の権利を、まずマンション建替え組合が設立された場合からご説明します。

 そもそも建替えに反対の住人の方は、建替え組合の設立が認可されたという公告があった日から30日以内に、組合に対して、自分は権利変換を希望せず、自分の区分所有権・敷地利用権に相当する分を金銭で支払ってもらいたい旨を申し出ることができます。また当初は建替えに賛成していたけれども、「権利変換」の話し合いの段になってそのやり方に同意できず反対に回った住人の方は、権利変換計画の決議から2カ月以内に、組合に対して、自分の区分所有権・敷地利用権を時価で買い取るように請求することができます。逆に組合の方から、同意しなかった住人に対して、区分所有権・敷地利用権を売り渡すよう請求することもできます。

 マンション建替え組合が設立されない場合も、反対住人に認められる権利の内容は基本的に同じですが、反対住民の相手方が変わってきます。建替え決議を目的とする集会の招集権者は、その集会で建替えに同意しなかった住人に対して、その後あらためて建て替えに同意するか否かを文書で催告します。催告を受けた住人は、2カ月以内に回答しなければなりません。集会不参加の住人と上記の催告に回答しなかった住人に対しては、建替えに参加する住人またはその買受指定者が、区分所有権・敷地利用権を時価で売り渡すよう請求することができます。



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