おおいけ法律事務所 弁護士 﨑山 有紀子

 
 

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なるほどQ&A 市民生活でよく遭遇する法的なトラブル・問題の解決法は

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 隣の家が、防犯目的で門に監視カメラを付けました。道路の方へ向けられているので、毎日お隣の前を通る度に私の姿が映像として記録されていると思うと、いい気がしません。外してもらうよう、請求することはできないでしょうか


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 「肖像権(しょうぞうけん)」という言葉は、聞いたことがある方が多いと思います。他人から無断で写真や映像を撮られたり、またその画像・映像を無断で公表、利用されないよう主張できる、という考え方です。プライバシー権の一種として認められる権利です。有名人だけでなく、一般人にも当然に認められます。

 監視カメラを設置することに、一般常識で考えて「無理もない」といった事情(これを法律的には「社会的相当性」と言います)がないならば、この肖像権侵害を理由としてカメラの撤去が認められるでしょう。例えば、カメラでの映像撮影が個人的な趣味にすぎない場合などです。もちろん、その方がどのような趣味をお持ちだろうと基本的には自由なのですが、家の前を通る人の肖像権を侵害するようなやり方では、認められませんよ、とそういうわけです。極めて常識的で分かりやすい話でしょう。

 このような場合には、カメラの撤去だけでなく、これまで撮影された画像データを引き渡すよう請求することも、この肖像権を根拠にできます。さらにその撮影データが不当な目的で使用されていたり、使用される可能性がある場合には、その使用差し止めと損害賠償も請求できるでしょう。

 さて、ご質問のケースは「防犯目的」で設置した監視カメラでした。この場合には、撤去が認められるケースと認められないケース、両方ありうると考えられます。〈その一帯で空き巣など犯罪被害が頻繁に発生している〉といったケース、〈その家に脅迫状が連日届いていて、家人が恐怖を感じている〉といったケースなどでは、カメラを設置することに一定の正当な理由があるとみなされ、周囲の人々の肖像権の侵害の方は「少し我慢してください」(これを法律的には「受忍限度の範囲内にある」と言います)という判断になることも考えられます。

 例として挙げたケースでお分かりのように、「防犯目的」は設置者の主観だけで認められるわけでなく、犯罪被害など何らかの客観的な事情がないと認められません。他人の肖像権を侵害するわけですから、認められるのは犯罪被害などある程度差し迫った危険・実害がある場合に限られます。



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