社会保障
夫の死後、収入の道が絶たれたので生活保護を申請しましたが、弟が大手企業の重役という理由で申請が認められませんでした。でも、弟は経済的な援助はまったくしてくれていません。私はどうすればいいのでしょうか
この「社会保障のQ&A」の最初のQ&Aでも少しご説明しましたが、まず大前提となるのが、「扶養義務者による扶養(=私的扶養)の方が、社会保障としての生活保護支給(=公的保護)よりも優先される」ということです。親族等から経済的な援助が受けられるケースでは、生活保護はもらえないのが原則です。
扶養義務者は、次の人たちが該当します。
①夫婦
②直系血族(父母、祖父母や子、孫など)
③兄弟姉妹(以上①-③は「絶対的扶養義務者」)
④これら以外の3親等内の親族のうち、家庭裁判所の審判を受けた者(「相対的扶養義務者」)
従って、生活保護の申請があると、必要に応じて戸籍謄本などを使ってこれらの扶養義務者がいないか確認が行われ、扶養義務者がいる場合には重点的にその扶養能力の調査が行なわれます。関係機関や扶養義務者本人への照会(問い合わせ)も行われます。
ご質問のケースでは、弟さんは③ですから、本来は生活保護よりも優先して経済的な援助を与えなければならない扶養義務者です。しかし実際に援助は得られていなくて生活に困窮しているわけですから、人権保障の点から生活保護は支給されるべきです。すなわち、誠心誠意の説明など努力をしたけれども扶養義務者が扶養に応じない場合には、扶養義務者の世帯の収入その他の諸事情や、申請者との関係に関する過去の経緯などを考慮した上で、生活保護申請が認められることもあります。
具体的には、以下のような手続き、対応をとることができます。
ⓐ生活保護の再申請
ⓑ都道府県知事に対する審査請求(却下決定の通告の翌日から60日以内)
なお、扶養義務者に十分な扶養能力がある場合は、暫定的に生活保護を認めた上で、家庭裁判所に扶養義務に関する調停や審判を申し立てる、という対応策をとることを求められることもあります。これも、扶養義務を履行してもらえるよう努力を尽くす、ということの1つです。
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