おおいけ法律事務所 弁護士 﨑山 有紀子

 
 

〒815-0073 福岡市南区大池1-23-8-305

電話092-555-7507

なるほどQ&A 市民生活でよく遭遇する法的なトラブル・問題の解決法は

社会保障




  Qアイコン

 不況で会社から解雇されました。さんざん探しましたが、再就職先も見つかりません。生活保護を受けられるでしょうか


  Aアイコン

 資産、収入(働いて稼ぐ能力)などあらゆるものを活用してもなお、経済的に生活していくことができない方に対して、その困窮の程度に応じて必要な経済的保護を行なうのが「生活保護」です。憲法では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」(25条1項)と定められています。この「健康で文化的な最低限度の生活」を保障し、自立を手助けするための制度です。

 では、どのような方(ケース)が生活保護を受けられるのでしょうか。まず確認しなければならないのは、経済的に困窮しているからと言って、それだけで生活保護がもらえるわけではない、ということです。先にご説明した通り、「あらゆるものを活用してもなお、生活できない」方だけが生活保護を受けられるのです。一般的には、次のような要件を満たす必要があります。


 ⓐ 相続財産などを含めても資産がない
 ⓑ 本人や同じ世帯の家族について、働いて収入を得る能力がない
 ⓒ 他の制度での給付も受けられない
 ⓓ 親族などからの援助も受けられない


 ⓐから言えば、預貯金、生活に利用していない土地や家屋などがあれば、それを売って生活費に充てることを勧められることになります。ⓑからすれば、同じ世帯の中に働いて収入が得られる人がいれば、これまた生活保護を受けられません。ちなみに生活保護の必要性や程度は「世帯」を単位として判断されます。ⓒからすれば、遺族年金や失業手当など他の制度で給付(お金)を受けることができる場合も、そちらの援助を頼ってくださいということで生活保護は受けられないことになります。最後にⓓの観点ですが、つまり「扶養義務者による扶養の方が、社会保障としての生活保護支給よりも優先される」ために、親族等から経済的な援助が受けられるケースでは、生活保護は受けられない、ということになっています。

 実際に生活保護の必要性を判断する場面では、特にⓐの「資産の活用」が厳しくチェックされます。

 まず家屋ですが、今、持ち家に住んでいる場合でも、「住む」という利用価値よりも「売る」という処分価値の方が経済的に著しく大きくなる場合には、売って生活費に充てることを勧められるのが一般的です。都市部の一等地に大きな邸宅を構えて住んでいる場合には、「まずはそれを売ったら、ある程度のお金になるじゃないですか」と言われてしまう--そんな例でイメージしてみてください。なお、生活保護費の一部を住宅ローンの返済に充てることは原則としてできません。

 預貯金や解約返戻金が生じる保険などがある場合も、まずはそれらの資産を使うことを求められます。自動車については、仕事に必要な場合には所有を継続できますが、単に日常生活の利便に用いられるだけでは保有は認められませんので、売って換金することを求められます。


 ただし、以上の点はあくまで原則です。各自治体は財政事情が異なることもあり、扱いが異なることもあり得ます。まずは、福祉事務所の生活保護担当(市町村役場の生活保護課)に相談してみることが大切です。



社会保障QA1 社会保障QA2 社会保障QA3 社会保障QA4