労働
雇用関係のトラブル解決のために利用できる裁判所の手続きには、どのようなものがありますか
雇用関係のトラブルを解決するための裁判所の手続きには、主なものとして、①民事調停、②少額訴訟、③民事訴訟、④労働審判--の4つがあります。対比しながら、各手続きの特徴をご説明しましょう。
①民事調停は、当事者同士が、裁判所の場で第三者を交えながら、話し合いによる解決を探る手続きです。原則として、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てます。裁判官(または調整官)が調停主任となり、一般国民から選ばれた調停委員(2人以上)と裁判所書記官、それに当事者(申立人と相手方)をメンバーとする「調停委員会」というものが作られ、話し合いを進めていきます。
当事者同士が話し合うことが基本なので、訴訟のように自分の主張を詳細にまとめた書類や証拠を準備することは、必ずしも必要ではありません。調停委員には弁護士や社会保険労務士といった専門家が就くこともありますので、一般市民が自分1人で手続きを行うことも可能です。
相手方が話し合いに応じなかったり、話し合いが合意に至らなかったりした場合には、手続きが打ち切られることがありますが、裁判所が解決案を示すこともあります。
②少額訴訟も、簡易裁判所に申し立てる手続きです。原則として1回の審理で判決が出される点が大きな特徴で、60万円以下の金銭の支払いを求める場合にのみ利用することができる手続きです。手続きには、一般国民から選ばれた司法委員が関与する場合もあります。
比較的単純な事案に向いている制度です。訴訟手続きの一種ですので、証拠等の事前準備が必要となりますが、一般市民が自分1人で手続きを行うことも可能です。
少額訴訟手続きの判決では、分割払いや支払いの猶予を定めることもできます。なお、相手方が少額訴訟の手続きによることに反対した場合等には、通常の訴訟手続に移行します。
③民事訴訟は、裁判官が双方の主張を聴いたり、証拠を調べたりして、最終的に判決によって解決を図る手続きです。最もポピュラーな裁判所の手続きですので、イメージしやすい方も多いかもしれません。「最終的に判決によって解決を図る」とご説明しましたが、訴訟の途中で話し合いにより解決すること(「和解」と呼びます)もできます。
手続きが厳格に進められるのが民事訴訟の特徴です。主張と証拠に基づいて権利関係を明らかにするため、当事者は、証拠の提出と主張を的確に行う必要があります。したがって、法律の専門家である弁護士等に依頼することが望ましいでしょう。
なお管轄は請求する金額によって異なります。140万円以下の場合には簡易裁判所、140万円を超える請求の場合には地方裁判所になります。
④労働審判手続は、労働審判官(裁判官)と労働関係の専門家である労働審判員2名が労働審判委員会というものを作り、話し合いによる解決を試みながら、最終的には審判を行う手続きです。原則として3回以内の期日で終えるのが最大の特徴です。管轄は地方裁判所です。
権利関係を明らかにする手続きのため、事前に証拠等を準備し、主張を的確に行う必要があるのは民事訴訟と同様です。つまり、法律の専門家である弁護士に依頼することが望ましい類型です。
審判に不服がある場合や事案が複雑で争点が多岐にわたるなど、この手続きでは適当でないと判断される場合などには、民事訴訟手続きに移行します。
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